東野圭吾『天空の蜂』

本日の一冊は、東野圭吾『天空の蜂』。

奪取された超大型特殊ヘリコプターには爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼動中の原子力発電所の真上。日本国民すべてを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非情の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき…。驚愕のクライシス、圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス。~文庫裏表紙より~

文庫で622ページに及ぶ大作ですが、物語自体は早朝5時頃に始まりその日の15時頃には終結します。そのスピード感と“原発を狙ったテロ”というスケール感により、紹介文どおり強烈な緊迫感が物語全体を支配しています。
その緊迫感を醸成しているもう一つの要因が“現実性”です。現実とのテロが発生するという想定以外は原発の機構や安全性に関する記述が、極めてリアルに説明されています。本書を読み終わったあと、日本原子力開発機構や高速増殖炉『もんじゅ』などのWebサイトを見ましたが、小説に登場する原発は現実に存在する原発をかなり忠実に再現しています。(ただし、本編後の解説も含めて本書には、実在する原発・組織との関連はどこにも記載されていません。「無関係である」という記述もありません。)
小説なのでストーリー自体は当然虚構ですが、作品中に登場する原発推進派と反原発派のそれぞれの主張はこれまでに訴訟で繰り返し行われてきたものと同じで、原発を巡る争いの過去と現在をまとめて見ることができます。ちなみに小説自体は1995年12月の『もんじゅ』ナトリウム漏洩事故の直前(1995年11月)に出版されたものです。
サスペンスとしても秀逸ですが、東野作品中で最もメッセージ性の強い社会派の作品です。リアリティと緊迫感という観点では、東野圭吾最新作『使命と魂のリミット』が気に入った方には特におすすめですよ。
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